
イタリアはローマ市内にある世界遺産【バチカン市国】をご存知でしょうか。ダン・ブラウン作の人気小説であるダヴィンチ・コードで一躍人気者になったロバートラングドン教授の次回作品【天使と悪魔】の舞台にもなりました。
小説の中にはバチカン市国内の様々な建築物や美術品、絵画など魅力的なものがたくさん出てきて、本当に国中を駆け巡っているかのような躍動感がありました。
この国の魅力を語っていく上でのキーワードはたくさんあります。【キリスト教】、【建築物】、【絵画】、【世界最小の独立国家】などなど・・。
古い歴史と、世界遺産の宝庫である【バチカン市国】の魅力をたっぷりとご紹介したいと思います。
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イタリアにあるキリスト教の総本山

バチカン市国を語るうえで欠かせないのがキリスト教です。全世界で12億人ともいわれるキリスト教の総本山でキリスト教カトリックにおいて最高権力者であるローマ法王が国を治めています。
バチカンがキリスト教の聖地とされているのは、キリストの使徒であったペテロがヴァチカンの丘というところにに埋葬されたという伝承から始まっています。
349年ごろペテロの墓の上に最初の教会である聖ピエトロ聖堂が建てられました。そして後にバチカンに住んだ教皇がキリスト教全体に強い影響力を持ち、中世から19世紀にかけて発展してきたのです。
その後1870年の戦争をきっかけとしてバチカンはイタリア領となり、ローマ教皇庁とイタリア王国の間で諍いが起こったため関係は断絶されてしまいました。
この関係に変化が訪れたのは1929年2月11日のことです。当時のイタリア首相ムッソリーニとの間で和解が成立し、世界最小の独立国家でありキリスト教カトリックの総本山であるバチカン市国が誕生しました。
ユネスコの世界遺産
冒頭にご紹介したとおり、バチカン市国は1984年に国全体がユネスコの世界遺産に登録されています。
詳しくは別の項目でご紹介したいと思いますが、サンピエトロ大聖堂をはじめとしてバチカン美術館やローマ法王の住居であるバチカン宮殿、システィーナ礼拝堂などがあります。
イタリアは世界で最も世界遺産の登録が多い国であり、バチカンを含めローマ周辺を回ることでたくさんの世界遺産を巡ることができます。
世界最小の独立国
バチカン市国は世界最小の独立国家ということは有名ですが、実際どのくらいの面積かご存知でしょうか。
国土面積は約0.44㎢で、身近な例でいうと東京ディズニーランドより少し小さいくらいです。国民はほとんどがカトリック教徒で、およそ1000人がバチカンで暮らしています。
バチカンの国籍は任期の間のみ特別に与えられるものであり、バチカンの国籍のみを持つ人はいません。ローマ教皇庁の職員は3000人近くいますが、ほとんどはイタリアに家を持ち国外から通勤しています。
バチカン市内に警察組織はなく、スイス人の衛兵が教皇の警護や市内の警備を務めています。スイス衛兵が護衛に採用されるようになったのは、16世紀命を狙われた教皇をスイス衛兵が命懸けで守ったことから始まったといわれています。
衛兵の制服はとてもカラフルで特徴的ですが、一説ではミケランジェロがデザインしたのではないかといわれていました。衛兵は2時間ごとに交代するのでタイミングが良ければその様子を見ることができます。
ローマ市内にあり出入り自由
バチカン市国はローマ市内にあり、パスポートの提示や検閲もなく自由に出入りすることができます。交通手段はローマ市内から地下鉄で20分程度のところにある最寄り駅まで移動します。
入国は原則的に徒歩になり、観光バスツアーなどの場合も国外の駐車場で降りて歩いて入国をします。
ただし観光客が入ることができる場所は制限されており、サンピエトロ広場、サンピエトロ大聖堂、バチカン美術館以外は立ち入り禁止となっています。
また、サンピエトロ大聖堂とバチカン美術館はそれぞれ入館前に手荷物検査を受ける必要があります。混雑するときなどは数時間を要することもあるので注意が必要です。
主な建造物

バチカン市国内にある主な建造物はサンピエトロ広場から始まり、サンピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂、バチカン宮殿、バチカン美術館があります。
世界遺産の宝庫といわれるだけあり、ボッティチェリやミケランジェロ、ラファエロなど世界に名だたる著名な芸術家たちの作品が膨大な量存在しています。
ただし、バチカン市国に入国する際には服装に注意が必要です。半ズボンやミニスカート、ホットパンツ、サンダル、タンクトップなど露出が多い服装をしていると入国を断られることがあります。聖堂であるということを意識し、敬意をもって訪問しましょう。
サンピエトロ大聖堂

サンピエトロ大聖堂は349年、コンスタンティヌス1世によってキリストの使徒ペテロが葬られたとされるヴァチカンの丘に建てられました。
今建てられているサンピエトロ大聖堂は2代目で、16世紀に完成したものです。教会堂・聖堂の中では世界最大級で、ラファエロやミケランジェロなどルネッサンス期に活躍した芸術家たちの手により荘厳な姿へと創り上げられていったのです。
サンピエトロ大聖堂の入場前にはボディチェックおよび手荷物検査を受ける必要があり服装もチェックされます。肩や足を露出した格好をしていると入場できませんので注意して下さい。
大聖堂へと入場するとまず5つの扉が目に入ってきます。それぞれ【死の扉】【善と悪の扉】【中央扉】【秘蹟の扉】【聖年の扉】と名前があり、【聖年の扉】は25年に一度しか解放されない神聖な扉です。
扉をくぐり抜けていくと長さが186.36mもある身廊に出ます。天井がとても高く細かい装飾や様々な彫像が並んでいます。
聖堂内はかなり混雑していますが、反時計回りに進むとスムーズに見て回ることができます。いくつかの礼拝堂がありカーテンで閉じられていますが静かに祈りをささげる場合には中に入ることができます。
サンピエトロ大聖堂で最も神聖な場所は、初代教皇である聖ペテロを祀った場所です。ベルニーニ作の大天蓋の下にペテロの墓があり、大天蓋の真上にはミケランジェロ作の大円蓋【クーポラ】があります。
その他、聖ペテロのブロンズ像や教皇のみが座ることができる司教座など様々なものが展示されています。初代教皇が眠る地下墓地やクーポラは見学することができますので、ぜひ行かれることをお勧めします。
バチカン宮殿
バチカン宮殿はサンピエトロ大聖堂に隣接しており、教皇の住居となっている場所です。教皇がバチカンに住むようになったのは、1377年グレゴリウス9世が初めだといわれています。
それ以前のバチカンには修道院や巡礼者のための宿泊施設しかなく、教皇の休憩用程度にしか使われていませんでした。
その後バチカン宮殿は歴代の教皇たちによって増築されていき、システィーナ礼拝堂や図書館、博物館などが創られました。
現在教皇が各国要人との謁見に使用している広間は20世紀に造られ、教皇自身はサン・マルタ館という大聖堂の南西にある場所で暮らしています。
バチカン宮殿は大半が博物館(バチカン美術館)で占められており、非公開の部分ももちろんありますが数々の作品を見ることができます。
バチカン美術館
世界最大の美術館、バチカン美術館です。通常美術館というと一つだけですが、バチカン美術館は総数24施設、展示ルート総延長7キロにも及ぶ巨大な博物館群です。
展示コースをすべて見ようとするとおよそ1週間はかかるといわれる巨大な施設ですが、世界中から観光客や巡礼者が訪れる人気スポットとなっています。
館内の見どころはそれこそ山のようにありますが、その中でもとくに有名なのがミケランジェロが手掛けた【最後の審判】があるシスティーナ礼拝堂と【ラファエロの間】です。
システィーナ礼拝堂に関しては別項目でご紹介したいと思いますので、ここでは【ラファエロの間】についてご説明したいと思います。
ラファエロの間はバチカン宮殿内にある4つの部屋の総称で、それぞれ【コンスタンティヌスの間】【ヘリオドロスの間】【署名の間】【ボルゴの火災の間】という名前がついています。
この中でも有名なのが【署名の間】です。ラファエロがユリウス2世の命を受けて一番最初に手掛けたといわれる部屋で、3年の歳月をかけて自筆の絵を描きあげていったといわれています。ラファエロの名作といわれている【アテナイの学堂】もこの部屋にあります。
その他にも天井や壁には、ラファエロが彼の弟子とともに描いたといわれる膨大な量のフラスコ画を見ることができます。
システィーナ礼拝堂
システィーナ礼拝堂はバチカン宮殿にある礼拝堂の中でも世界的に有名な礼拝堂です。1477年から1480年にかけてシクストゥス4世の命により古い礼拝堂が建て直され、彼の名にちなんでシスティーナ礼拝堂と名付けられました。
その内装を手掛けたのはミケランジェロやボッティチェリなどルネサンス期を代表する巨匠たちで、その中でもとくに有名なのがミケランジェロ作【最後の審判】です。
システィーナ礼拝堂はローマ教皇庁の中でも特に大切な役割を持っています。カトリック教会の頂点であるローマ法王が選出される【コンクラーヴェ】がシスティーナ礼拝堂で行われているのです。
コンクラーヴェは【鍵のかかった】という意味で、次期教皇の候補者である枢機卿たちがシスティーナ礼拝堂に閉じこもり、匿名で投票を繰り返します。
教皇が選出されると煙突から白い煙が上がり、サンピエトロ大聖堂の鐘を鳴らすというならわしがあります。
なお、システィーナ礼拝堂内は写真撮影が全面禁止になっています。
主な名画・彫刻

世界遺産バチカン市国内に数ある芸術作品の中でもとくに有名な彫刻・絵画をいくつかご紹介していきたいと思います。
システィーナ礼拝堂の壁面には祭壇から右側にキリストの生涯、左側にモーセの生涯が描かれたフレスコ画があります。
キリストの洗礼
システィーナ礼拝堂にあるペルジーノ作・【キリストの洗礼】です。【キリストの洗礼】はラファエロの師匠であるペルジーノの代表作となっています。
イエスがヨルダン川において洗礼者ヨハネから洗礼を受けた場面が描かれています。
【キリストの洗礼】の絵は様々な芸術家たちによって数多くの作品が残されており、ヴェロッキオとレオナルド・ダ・ヴィンチの共作といわれるものがウフィッツィ美術館に収蔵されています。
キリストの誘惑
プリマヴェーラやヴィーナスの誕生の絵で知られるボッティチェリ作・【キリストの誘惑】です。
洗礼のあと40日間引き回され空腹を覚えたイエスが荒野にてサタンから誘惑されている場面を描いているため、【荒野の誘惑】(あらののゆうわく)というタイトルでも知られています。
聖ペテロへの天国の鍵の授与
ペルジーノ作・【聖ペテロへの天国のカギの授与】という絵画です。主イエスから12使徒の長に認められ、天国の門の鍵を渡されるという場面を描いています。
また、ペテロという名はイエスが授けたといわれヘブライ語で【岩】を意味します。
最後の晩餐
コジモ・ロッセッリという作家による【最後の晩餐】です。最後の晩餐はキリストが12人の弟子と食事を共にし、【この中に私を裏切るものがいる】というイエスの発言の直後を描いた作品です。
最後の晩餐というとレオナルド・ダ・ヴィンチが思い浮かぶ方がほとんどだと思いますが、当時は人気の題材で多くの芸術家が同作品を残しています。
ミケランジェロの天井画
システィーナ礼拝堂の天井を飾るのは、若き芸術家ミケランジェロによる世界最大の作品です。この作品はユリウス2世の命により1508年からおよそ4年をかけて創りあげられました。
天井画の主題になっているのは天地創造、楽園の追放、バベルの塔、ノアの箱舟などの神話と、イエスの弟子たちによる伝承に基づいた創世記などです。
天井の中央部には創世記の場面が9つに分けて描かれており、なかでも神がアダムに命を与えるときの手をさし伸ばしている構図はとても有名です。
ピエタ像
ピエタ像は、磔刑に処されて十字架から降ろされたイエスを悲しみの表情の聖母マリアが抱きかかえているという構図の彫像です。
この作品を作ったのは当時23歳であったミケランジェロです。システィーナ礼拝堂の天井画でも知られるミケランジェロですが、彼自身は絵画よりも彫刻に力を注いでいたといわれています。
ミケランジェロは生涯にわたり4体のピエタ像を製作しましたが、完成したのはサンピエトロ大聖堂に置かれているこの一体のみでした。
サンピエトロ大聖堂の中でも高い人気がある作品ですが、この作品のあまりの美しさに嫉妬して像を壊そうと近寄った人がいたため、現在は防弾ケースの中に入れられています。
聖ペテロ像
サンピエトロ大聖堂の内部に置かれているのが初代ローマ教皇、聖ペテロのブロンズ像です。キリストより天国の門の鍵を授けられたため、鍵を持った姿をしています。
聖ペテロの像は信者が祈りを捧げた後足に接吻をする為、足元がすり減っています。またペテロのブロンズ像は年に2度、法衣を身にまとい教皇の指輪が嵌められます。
このブロンズ像は最近の研究により、およそ4世紀ごろのシリア人によって創られたとされています。
ラオコーン像
バチカン美術館内部のピオ美術館に置かれているのがラオコーン像です。ラオコーンはトロイの木馬の一部をあらわした作品です。
ギリシア軍の罠であるトロイの木馬を槍で破壊しようとした神官ラオコーンが女神アテナから遣わされた海蛇に襲われ、2人の息子とともに殺されるというシーンです。
この像の起源は諸説あり紀元前42年から紀元前20年ごろの作品ではないかといわれています。
ラオコーン像は皇帝ナポレオン・ボナパルトによって現在のルーブル美術館に長い期間収蔵されており、ナポレオンが亡くなった後イギリスより現在のバチカン市国へと返還されました。
まとめ

世界遺産バチカン市国の成り立ち、名画、建造物などをご紹介してきましたが、最後にバチカン市国内を訪れる際の注意点などをまとめていきたいと思います。
バチカン市国はパスポートもなく自由に出入りできる国ですが、キリスト教カトリックの聖地といわれている場所です。
神聖な場所であることを意識し、肌を過剰に露出した服装を避けることと聖堂内では静粛にするということを心がけてください。
また、サンピエトロ大聖堂やバチカン美術館を見学する際には手荷物検査、ボディチェック、服装チェックを受ける必要があります。
通常のミサや特別な礼拝などが行われると世界中からカトリック教徒が巡礼に訪れるため大混雑になります。
入場までに数時間を要する場合がありますので、事前に予約をしていくことをお勧めします。
バチカン市国内にはオリジナルの切手を扱っている郵便局があるため、ご自身や家族、友人にあてて手紙をしたためてみてはいかがでしょうか。
こちらの記事で、少しでも皆様の楽しい旅のお手伝いができましたら幸いです。
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