
「哲学の道」は、京都左京区の熊野若王子神社から銀閣寺までの、琵琶湖疎水沿いに続く約2kmの散歩道。京都で時間があれば、ちょっと足を伸ばして、桜や紅葉、夏のホタルなどや四季折々に変化する自然に彩られた緑豊かな小道を散策してみてはいかがでしょう?
哲学の道の始まりは、明治時代までさかのぼります。1890年、琵琶湖の水を京都市内に流すため、琵琶湖疎水が造られました。その際、疎水脇に管理用道路として小道が作られたのが始まりです。
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「哲学の道」の由来
最初は、芝生が植えられただけのシンプルな道でしたが、次第にこの道を通行する人が増えていきました。
近くに京都大学があることから文人が多く住み、そのため、「文人の道」と称されるようになります。京都大学の哲学者・西田幾多郎や田辺元らがこの道を散策しながら思索にふけっていたことから、「思索の小径」、「散策の道」など、様々な名前で呼ばれるように。
1972年、地元住民による保存運動が起こり、散策路が整備されるとともに、「哲学の道」という名前が正式に決まりました。小道沿いの法然院の近くに、西田が詠んだ歌「人は人 吾はわれ也 とにかくに 吾行く道を 吾は行くなり」の石碑が建てられています。1987年には、歩きやすいように敷石が敷かれ、現在の姿になりました。同じ1987年には「日本の道100選」に選定されています。
敷石の裏話
ちなみにこの敷石は、1987年に廃線となった京都市電の敷石を再利用したもの。市電の路面に使用されていた敷石は良質な御影石で大変高価なものでした。そのため、市電が廃線となった後、この敷石を捨てずに再利用しようということになり、学校や大学、寺社の参道、公園など、多くの場所に贈られました。二年坂や三年坂、石塀小路などの石畳にも、市電の敷石が再利用されています。歴史を経た御影石にはアスファルトにない情緒があり、東山の町並みによく調和しています。
美しい雰囲気

疎水の幅は3~4メートルと細く、脇の小道は美しく情緒に富んだ自然溢れる雰囲気です。1921年、日本画家・橋本関雪の夫人が京都市に300本の桜の苗木を寄贈しました。寄贈者にちなみ「関雪桜」と呼ばれる沿道沿いの桜は、手入れが続けられ現在では約450本にまで増え、京都でも屈指の桜の名所として有名です。満開時には両岸の関雪桜が花のトンネルをつくり、散り始めた花びらが水面を淡く彩ります。風や雨の翌日、散り敷いた花びらが水面をピンクに染め上げる様も素晴らしいです。
疎水周辺は自然環境がよく保護されているため、自然に生息したホタルが見られる場所としても有名です。見ごろは5月末から6月にかけて。時間は夜8時から9時あたりがベストです。自由に撮影は出来ますが、あまり騒いだりフラッシュをたくと寄ってこなくなるので注意しましょう。
ゲンジボタルの生息地として有名
京都のような大都市の観光客も多い地域にゲンジボタルが生息しているというのは驚きです。若葉の頃、紅葉の頃と、季節の移ろいを映す小道は、どの季節でも訪れる人の目を楽しませてやみません。冬枯れの風情も捨てがたいもの。観光客で溢れる春や秋を避け、小雪がぱらつくような日にそぞろ歩きをしてみるのもお勧めです。寒さの中で咲くサザンカが、冬枯れた道に一点の紅をさし美しさに色を添えてくれます。ただし、疎水沿いは寒さがひとしお身にしみます。寒い日にはホッカイロを持って歩くのを忘れずに。
哲学の道のおすすめ散策ルート
疎水沿いの道は、銀閣寺から南禅寺に向かって微妙に下り坂になっているので、銀閣寺側をスタートにする方が楽で歩きやすいのでお勧めです。銀閣寺から南禅寺までの間にも、いくつかの見どころがあります。のんびり散策を楽しみながら、ところどころに現れる寺院などにも足を向けてみてください。
「幸せ地蔵尊」
銀閣寺近くの弥勒院は、「幸せ地蔵尊」という赤い旗が目を引く小さなお寺です。その昔、室町の呉服商が弥勒院に預けた子安地蔵がお堂に祀られています。子供を抱いた木造のお地蔵さんには、今も参拝の人が後を絶ちません。弥勒院以外にも、道沿いにはたくさんのお地蔵さんがあります。
浄土宗の山寺・法然院
弥勒院の少し先にあるのが、浄土宗の山寺・法然院です。周辺は住宅街なのに、緑深い境内に一歩入ると深い山奥にいるような静かな雰囲気に包まれます。境内には水を表す白砂壇が作られ、その横を通ると心身が浄められるそう。流水紋だけでなく、時期によっていろいろな模様や文字が描かれるのが特徴です。
京都屈指の紅葉の名所永観堂
そのほか、京都屈指の紅葉の名所といわれる永観堂、石川五右衛門ゆかりの三門がある南禅寺、狛犬ならぬ狛ネズミで知られる大豊神社などが点在しています。大豊神社の社務所には、かわいいウサギの「縁結びお守り」や「うさぎみくじお守り」があり、とっても可愛いんですよ。
ゴールの熊野若王子神社

ゴールの熊野若王子神社付近にある廃業した喫茶店付近では、住み着いた多くの猫さんたちが話題になっています。泉屋博古館、野村美術館などミュージアムのほか、お抹茶を楽しめる喫茶店も道沿いに並んでいます。お店に入って一息つくもよし、道沿いに置かれたベンチに座ってボーっとするもよし。
気の向くままに、静かな小道で思索にふけってみて下さい。
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